問題解決の考え方|問題の発見からPDCAサイクルまでの手順と発想法
情報Ⅰは「情報技術を使って問題を解決する力」を育てる科目です。この記事で扱う問題解決の手順は、プログラミングやデータ分析など、ほかの分野でも繰り返し使う考え方です。共通テストでは、文化祭や部活動などの身近な場面で、どの手順の何をしているかを読み取る形で問われます。
問題とは何か
情報Ⅰでいう問題とは、理想(あるべき姿)と現状とのギャップのことです。
例: 文化祭の模擬店で、「お客さんを待たせずに販売したい(理想)」のに、「昼に30分以上の行列ができた(現状)」。このギャップが問題です。
「行列ができた」という現象だけを見るのではなく、何が理想で、何が足りないのかをはっきりさせることが、問題解決の第一歩です。
問題解決の手順
問題解決は、おおむね次の手順で進めます。
| 手順 | すること | 模擬店の例 |
|---|---|---|
| ① 問題の発見 | 理想と現状のギャップに気づく | 昼に長い行列ができた |
| ② 問題の明確化 | 原因を調べ、解決すべきことを具体的にする | 会計に時間がかかっていた。注文から受け取りまで1人平均3分 |
| ③ 解決案の検討 | 情報を集めて分析し、複数の案を出して比べる | 食券制にする、メニューを減らす、レジを2台にする |
| ④ 解決案の実行 | 選んだ案を計画を立てて実行する | 翌日から食券制にする |
| ⑤ 評価 | 結果を確かめ、次の改善につなげる | 待ち時間が平均10分に減った。食券の売り場に新たな列ができた |
情報の収集と分析
②や③では、根拠となる情報を集めます。集め方には次のようなものがあります。
- アンケート・インタビュー:利用者の意見や満足度を聞く
- 観察・測定:行列の長さや会計にかかる時間を実際に測る
- 文献・Web・統計データ:同じような取り組みの事例や、公開されているオープンデータを調べる
集めたデータは、表やグラフにして分析します(第4章「データの活用」)。手順に沿って待ち時間を計算するなら、シミュレーションも有効です。
アイデアを出す・整理する方法
ブレーンストーミング
複数人で自由にアイデアを出し合う方法です。次の4つのルールを守ります。
| ルール | 内容 |
|---|---|
| 批判厳禁 | 出たアイデアを否定・批判しない |
| 自由奔放 | 突飛なアイデアも歓迎する |
| 質より量 | できるだけ多くのアイデアを出す |
| 結合・便乗 | 他人のアイデアを組み合わせたり、発展させたりする |
その場で良し悪しを判断しないのがポイントです。評価や絞り込みは、アイデアを出し終えてから行います。
KJ法(親和図法)
ブレーンストーミングなどで出たアイデアを、1枚ずつカードに書き、似たものどうしをグループにまとめて見出しを付ける方法です。グループどうしの関係を図にすることで、問題の全体像や原因が見えてきます。考案者・川喜田二郎の頭文字から名付けられました。
そのほかの整理方法
- マインドマップ:中心のテーマから放射状に枝を伸ばして、関連することを書き出す
- ロジックツリー:問題を「なぜ?」「どうやって?」で木の枝のように分解していく
- 表による比較:解決案ごとに、費用・効果・手間などを表にまとめて比べる
トレードオフ
ある条件を良くすると、別の条件が悪くなる関係をトレードオフといいます。
例: ゲームの体験時間を長くすると、1人あたりの満足度は上がるが、ほかの来訪者の待ち時間は長くなる。
解決案を選ぶときは、すべての条件を最高にすることはできないので、何を優先するかを決め、条件のバランスがとれた案を選びます。2026年の本試験 第3問 では、「ゲームはできるだけ長く楽しんでほしいが、10分以上は待たせたくない」という条件のもとで、体験時間を決める問題が出ました。
PDCAサイクル
一度の解決で終わらせず、改善を繰り返すための考え方が**PDCAサイクル**です。
| 段階 | 内容 | 模擬店の例 |
|---|---|---|
| Plan(計画) | 目標を決め、計画を立てる | 待ち時間を10分以内にするため、食券制を導入する |
| Do(実行) | 計画どおりに実行する | 食券制で販売する |
| Check(評価) | 結果を測定し、目標と比べる | 待ち時間は平均10分。ただし食券売り場が混雑した |
| Action(改善) | 評価をもとに改善策を考え、次の計画に生かす | 食券の販売窓口を2か所に増やす |
Action のあとは次の Plan に戻り、サイクルを回し続けます。「C(評価)」を飛ばすと、改善が効果を上げたのか分からなくなります。
共通テストでの出題
- 情報システムの改良:2026年の本試験 第2問A は、住民証明を発行する情報システムを、「書き換えられるおそれ」「漏れるおそれ」という問題を見つけるたびに改良していく構成でした。問題の発見 → 解決案 → 新しい問題の発見、という流れそのものです。
- シミュレーションによる解決案の評価:2025年の本試験 第2問B(集金のおつり)、2026年の本試験 第3問(ゲームの待ち時間)では、条件を変えて結果を比べ、よい案を選びました。
- 手順の名前を問う問題:「アンケートで現状を調べる」のはどの段階か、といった形でも問われます。
よくある間違い
- いきなり解決案を考える:原因を明確にしないまま対策をとると、効果のない対策になりがちです。
- ブレーンストーミングで意見を評価する:その場での批判はルール違反です。評価は出し終えてから行います。
- 一度の実行で終わりにする:評価して次の改善につなげるまでが問題解決です。
まとめ
- 問題とは、理想と現状のギャップ
- 手順は「発見 → 明確化 → 解決案の検討 → 実行 → 評価」
- アイデア出しはブレーンストーミング、整理はKJ法
- 条件どうしのトレードオフを考え、優先順位を決めて案を選ぶ
- PDCAサイクルを回して、改善を続ける